「表章 能楽の歴史」を読む

火曜日   晴れ。
暖かし。朝から青空、予報では曇りだった筈。
気象予報官とエコノミストが予測が外れて責任をとったという話は、何故か聞いたことがない。云いっぱなしの典型的な例だ。他人のことは言えぬ。このブログも無責任な書きっぱなしではないか。

能楽の学者として高名な表章氏が、能楽の歴史について書かれた文章を読んでいたら、「観阿弥世阿弥」の父子は楠木の血筋で、南朝のスパイだったとする小説家がいる。これは全く根拠のない説で、観、世をムリに武士の血を引いていることにしたいデッチ上げに過ぎない」という批判があった。(岩波講座 能、狂言 第1巻)この小説家とは、表氏は名前は書いていないが、杉本苑子さんのこと。杉本さんは歴史小説の大家だが、かたわら宝生流の謡曲をたしなみ、「世阿弥」の研究家でもある。彼女が若いころ書いた作品に「華の碑文」という、世阿弥の芸と生涯を中心に書いた小説があり、1978年刊の中公文庫に収められている。読み応えのある500頁を超える大作だ。観阿弥 世阿弥の時代は丁度南北朝の乱の時代で、生き残った楠木正成の子供がゲリラ戦を繰り返し、北朝方を混乱させていたが、それが出来たのは、楠木の血を引いた観、世が2人を庇護していた足利義満の動向を南朝方に流していたからだ、というのだが、このようなストーリーは、能楽の歴史を芸術色に綺麗にしておきたい学者先生には気に入らないらしい。観 世は武士との血縁のつながりはないと強く主張している。
小説の上だからどうでもいいと思うのだが、専門家には気になるものらしい。師匠も、こんなことは別に気にはしていないようだった。

ここで終わったら無責任、表氏の「能楽の歴史」は立派なものです。読んで大変勉強になりました。