吉田秀和展

木曜日  晴れ、夕方から風強し。
昼前から一人で鎌倉文学館で開催中の「吉田秀和展」へ。いつでも行けると思っているうちに開催期間はあと3日で終わり。いつもの例で駆け込み観覧となった。

長谷への路は久しぶりだが、天気がよいのに人影は少なし。時間が正午頃でまだ早かったせいなのか、それともテーマが特殊だったせいか?文学館も訪問者の姿はまばらだった。たしかに「音楽評論家」の展示は難しいかもしれない。文学者なら作品の原稿を並べて、年譜をつくれば形になるが、存命中の「音楽評論家、吉田秀和」ではそうもゆくまい。
それでも展示品は原稿と、それが掲載された雑誌が多かった。楽譜の入った原稿は一点のみ。丁寧な手書きの譜面だった。著作も幾つか並んでいたが、展示品は全集の一部と、誰でも手に入りそうな再刊ものが多く、これでは資料としての価値はない。初版の著作を並べるべき。吉田秀和が長いこと続けていたNHKの放送原稿を見たかったがそれはなし。「音楽展望」の原稿があったのはよかった。吉田秀和は鎌倉に40年近く住んでいて「名誉市民」になっているが、市民としての生活が紹介されてないのは物足りない思いがした。小林秀雄からの葉書が一つあった。CD紹介の礼状だったが、小林邸は吉田邸の目の前なのに、わざわざ葉書のやり取りがあったのは面白いことだ。
吉田は93歳、今年は主管を務める水戸室内管弦楽団のヨーロッパ演奏旅行に同行したらしい。大したものだ。それでも展示会には、長寿や健康への心がけなど、俗人が気になることには何も触れてないのがよかった。