毒ギョウザ そして漱石の「行人」

金曜日 晴れ。
やや温暖。されど雑事あり、ウオーキングは出来ず。ニュースが中国産冷凍食品のことで半分埋まる。TVは「毒入りギョウザ事件」というようになった。それにしてもこの事件は、日本の食卓がいかに外国に依存しているかを知らされた事件でもあった。自給率向上策がないと大変だということが身に染みて理解できるようになった。食品テロが空想の世界では無くなってきたではないか。福田さん どうする?

 漱石の「行人」は、「彼岸過迄」「こころ」と並んで晩年の3部作と云われている。弟子の森田草平は「先生の残された作品で最高のもの」絶賛しているそうだが、確かに面白く、複雑な男女の葛藤がドラマチックに描かれ映画になりそうな内容だ。だが内容は深刻。主人公の一郎は学者で自己中心的。父母、兄弟、妻など周りのものと折り合いが悪い。友人からは精神病を疑われている。まさに漱石の写し身に他ならない。
大正元年1月に朝日新聞に「彼岸過迄」の連載を始めてたころから漱石は胃潰瘍、糖尿病、神経衰弱に悩まされながら、「行人」「こころ」「道草」と朝日新聞への連載を続け、大正5年の12月、矢張り朝日新聞に連載していた「明暗」執筆中に胃潰瘍で死去した。49歳。だから小説「明暗」は未完で初版の函書きには「漱石遺著」としてある。
 生涯最後の5年に書き下ろした5本の長編小説は、漱石が文字通り生命を賭して書き上げた、そして書き切れなかった作品なのだ。
 今日から2月、あらためて「こころ」を読み出した。