フィデリオ

日曜日  曇り。

風強く落ち葉しきり。木枯らしの如し。休日で市場が開いてないせいか、何故かホッとする。困ったものだ。

来月、ウイーン国立歌劇場が来日し、ベートーベンの「フィデリオ」を上演する。振るのは小澤征爾。いわば凱旋興行だ。戦火で破壊されたこの歌劇場が1953年に再建され、開幕に上演されたのがこの「フィデリオ」だった。指揮はカール べーム。ウイーン国立歌劇場と「フィデリオ」は特別の因縁があるのだ。その意味で今度の上演は聴きものかも知れない。

ということで、今日は「フィデリオ」に入りこんだ。

1つは、ザルツブルグ イースター音楽祭で上演されたベルリンフィルの「フィデリオ」。
このビデオは、残念ながらハイライト版で、1幕の有名な「囚人の合唱」や、終幕前の「レオノーレ」序曲がカットされている。また全体に科白が全部カットされているので気の抜けたビールのよう。科白などドイツ語なので聴いてもわからないが、それでもこれがないと妙な感じになる。指揮はサイモン ラトル。是非全曲版を探し出すべし!

もう1つ、バーンスタイン指揮 ウイーンフィルのCDを聴いた。レオノーレを歌うグンドラヤノビッツ、フロレスタンのルネコロの2人が素晴らしい。2幕でルネコロが歌い出すフロレスタンのレスタティーボは身の震える思いがする。終幕前のレオノーレ序曲3番は流石ウイーンフィル。これだけでも生で聴きたい。

フィデリオ」の舞台は牢獄なので決して華やかなものではない。テーマも男になりすました妻が牢獄に繋がれている夫を救い出すということだけの単純なものだが、何しろ音楽がいい。誰かが、音楽が立派過ぎるなんて言っていたが、そこがベートーベンなのだ。「フィデリオ」は舞台を見なくても耳で聴いているだけでもいいかもしれない。生に接することの出来ない負け惜しみかな?