津軽書房

月曜日 晴れ。
雪の翌日、青空がまぶしい。朝方、雪がカチカチに凍って歩くのが危ない。家の前を形ばかりの雪掻き。午後には大分溶けてきたが また雲も出てきた。

今日は立春.寒い中に梅もチラホラ。だが春はまだ遠いようだ。

内田百輭の「阿呆列車」は新潮文庫をはじめ、いろいろな版で手にすることが出来るが、20年くらい前になるだろうか 菊版、函入りの、手に取るとズシリと重い「阿呆列車」を古本屋の棚で見つけた。奥付をみると、1978年、「津軽書房」で出したものだった。定価は8800円。造本は出版者が百輭にほれ込んで、商売抜きで作ったような立派なものだった。「津軽書房」。全く知らない地方の出版社だ。津軽版の「阿呆列車」はその時は買えなかったが、何年か後に小さな古本屋に並んでいるのを見つけた。自宅にあるのがそれである。最初に見つけてから7〜8年が経過していたと思う。「津軽書房」については1979年刊の「津軽書房15年」という関わりのあった人の文章を集めたものが出されており、これを読んで、志のある地方の出版社と、金を惜しまずに、本と酒と女に人生を賭けた社長の高橋彰一という人のあったことを知った。
今日の朝日新聞夕刊の連載コラム「人脈記」は、この津軽書房と高橋彰一の話である。タイトルは「津軽が射止めた直木賞」
 津軽書房は84年に倒産し、高橋は99年死去した。70歳。酒の招いた胃ガンだったという。