ザルツブルグ音楽祭 「フィガロの結婚」

水曜日 晴れ。
今日は爽やかな秋晴れでした、というのが気象予報士の言だが、当地は雲多く風も強くてとてもじゃないが「爽やかな秋晴れ」ではなかった。来週は晴天続きという予報だが、信用出来るかな。
今日は浜友会の稽古日で、予定していたところ師匠が風邪で中止との連絡あり、思わぬ時間が出来た。お陰で録画したままになっていた06年ザルツブルグ音楽祭の「フィガロの結婚」を視聴.
このフィガロは、人気のネトレプコがスザンナを演ずることからモーツアルトイヤーの音楽祭最大の呼び物となり、初日のキップにはなんと70万円の値がついて、それでも売り切れたいう話も伝えられていた。それなりの期待を持って観たのだが、ガッカリした。違和感のあるモーツアルトだった。一番気に入らないのは、クラウス グートなる人の演出だ。まず序曲が半分くらい流れた処で幕が上がってしまい、おやッと思うと、ステージには出演者がボーッと身動きせずに突っ立っているだけ。そこへ出てきたのが、背中に天使の羽をつけたモーツアルトで彼が序曲が終わるまで舞台の上を飛び跳ねる。これは台本にはないもので、演出者グートの発想。このモーツアルト君が以後全幕の要所要所に出てきて、雰囲気をぶち壊しにしている。普通は序曲が終わって幕が上がると、フィガロがスザンナとの新居に入れる家具の置き場所などを楽しそうに検分しながらも、スザンナは伯爵の野心を心配するというシーンなのだが、今日のフィガロは始めから無用の長物のシーンがあるのだ。また、4幕の舞台は、フィガロが借りた部屋、伯爵夫人の部屋、伯爵の館の広間、庭園、という設定なのだが、白い壁のままで全幕変わらず、屋外か、屋内かよくわからない。第2幕冒頭の有名な伯爵夫人のカヴァテイーナ「愛の神様みそなわせ」、これは伯爵夫人の部屋で歌われるものだか、なぜか枯葉の舞う白い壁の前でうたわれる。第4幕は屋外シーンで、皆がそれぞれ庭のアズマ屋とか木陰に隠れているのが通常だが、ドアを使うだけだから雰囲気なし。気になったのは、床にころがって演技するシーンが多く、汚された感がある。ラブシーンも同じ横になって演ずるから生々しく品格を落としている。オペラ「フィガロの結婚」は第4幕で大きく盛り上がり、フィナーレの7重唱で聴くものを幸福感で包むなだが、この大事なところにもあの羽の生えたモーツアルト君が出てきて妙なしぐさをするから感興をそがれること著しい。故意に暗く仕立て上げられた「フィガロ」だった。
オペラは音楽なのに「演出」が立ちはだかって自己主張をするようになると感動できなくなる。本場ザルツブルグでこんな演出過剰の舞台がまかり通ると先行き不安だ。典雅なハプスブルグの雰囲気を失うべきではないと思う。
 指揮 アーノンクール。 ウイーンフィルハーモニー。ウイーン国立歌劇場合唱団。
 フィガロを歌ったダルカンジェロの第4幕のアリア「さあ、目をあけろ」はすばらしかった。太めの伯爵夫人はピッチが下がるのが気になった。ネトレプコはまあまあというところ。




ぎょろ目のアーノンおやじにも一言云いたいが、これはあらためて。