ロストロポーヴィッチ死去!

土曜日 晴れのち雨。
 今日の朝刊、ロストロポーヴィッチの死去を伝える。ロストロポーヴィッチといえばソ連から反体制派の烙印を押され、1974年に亡命し、78年には国籍を剥奪されながらも音楽を捨てず、社会主義国家での自由を求めた気迫のあるチェリストだった。何度も来日しているが、一度もナマで聴いていないのが残念だ。それでも何故か身近かな人が一人消えたような寂しさが残る。
 1952年にピアノ、ギレリス、ヴァイオリン、コーガンと組んでチャイコフスキーピアノ三重奏を録音し、そのLPを日本では「新世界レコード」からリリースしているが、これがロストロポーヴィッチを知った始めだった。このLPはコーガンのバイオリンに惹かれて買ったのだが、針をおろして始めに流れてくるチェロの音の豊かさにびっくりしたものだ。
追悼ではないが、ドボルザークの協奏曲を弾いた録画を聴きたかったが、録画したテープが奥に隠れて取り出せず、やむを得ずボッケリーニの協奏曲を聴く。10年前の映像だがロストロポーヴィッチの面構えには不敵なものがある。水戸室内管弦楽団、小澤征爾の協演。明日は、バッハの無伴奏組曲のどれかを聴いてみよう。1995年録音。チャイコフスキーを録音した43年後のものだ。この43年の間にはロストロポーヴィッチにとっては筆舌に尽くし難い何年間かがあったのだ。1989年ベルリンの壁が破れた時、ロストロポーヴィッチは感激してすぐパリからベルリンに駆けつけ、壁の前でこの無伴奏組曲の3番を演奏したという。その時の写真を見ると自由を得られた喜びで、矢も盾もたまらず駆けつけたという雰囲気が溢れている。ロストロポーヴィッチは激情の人だったのだ。