城山三郎
金曜日 晴れ。
いよいよ春本番の暖かさ。午後、所用で横浜へ出たが軽快な服装の人が昨日に比べると増えているような気がする。だが桜はまだ。満開まで4〜5日というところか。
城山三郎氏 死去。意外に若くまだ79才。城山氏には、志高く、筋道が通った気概のある人物を取り上げて書いた作品が多く、いつも読後には何か説得力を残すような人だった。
嘗て小松伸六氏が語っていた。
城山さんは多作だ。
だが、乱作ではない。
同感である。
城山の書いた人物は、広田弘毅、金子直吉、石田礼助、田中正造、渋沢栄一など。
この中で1つをえらぶと、国鉄総裁 石田礼助を書いた「粗にして野だが卑ではない」がいい。第一この書名がいい。これは石田が国会答弁で自分を語るのに言った言葉だという。「諸君、自分は粗にして野だが、卑ではないつもり」というのがその発言。
代議士先生に、諸君と呼びかけたのがいいではないか。この時石田は76才だった。
石田の国鉄総裁としての報酬は、ブランデー月1本だった。退任の時、国鉄職員は国鉄ビルの玄関から東京駅まで、1列に並んで見送ったという。
石田が通勤に使ったのは、公用車ではなく国鉄だった。
ところで城山本はハードカバーで何冊かあった筈だが、なぜか今は1冊も見当たらない。処分したのか、探せば出て来るのか、見当がつかない。困ったものだ。
まさに「粗」だ。