漱石「彼岸過迄」再読

火曜日 雨。
珍しく寒い1日だった。外出せず。
漱石「彼岸過迄」読了。12年ぶりだ。この作品は明治45年元旦から4月29日まで東京朝日新聞に連載されたもので、題名は、元旦から彼岸過ぎまで書き続けるということでつけたもの。内容と題名が全く関係がないという意味で珍しいのではないか。7本の短編をつなぎ合わせて一編に仕立て上げるという形式をとっていて、中心は「須永の話」。全体の三分の一を占める。一種の告白文だが、ここだけを読んでも面白いかもしれない。「雨の降る日」という章には、2ツになる女の子が亡くなるところを書いたものだが、漱石は2才になる五女雛子を前年の11月に失っており、その思いを込めて書いたものといわれる。だから書かなくてもよいエピソードのように思えるが、漱石本人としては書かずにはおけなかったことなのだろう。この女の子の父松本は漱石自身がモデルといわれているが、あまり大事なことではない。各編の結末がなく、これからどうなる?と気を持たせながら終わっているので、物足りないところもあるが、それがまた余韻のようなものを残している。
 漱石のことは、何故か書き出すと長くなる。これでやめます。次は「行人」そして「こころ」。これが「彼岸過迄」と合わせ、後期3部作といえあれるもの。これだけ読んでからまた書くつもりだが、いつのことになるやら。