土曜日 終日快晴 
 朝は秋風爽やかなり。午後3時ごろから
 散歩がてら街へでたが、このときはやや
 蒸し暑く、快適さなし。
 本当の秋はまだ10日くらい待たないと
 ダメなのかも知れない。はやく、爽やかに
 外出できる時候になって欲しいものだ。

 先日、相棒が、来月横浜の三渓園で開かれる
 野外能について、当日のシテ方 友枝昭世師と
 照明デザイナー 石井幹子さんの対談が載って
 いる「家庭画報」を買ってきた。2人の対談の
 中に、薄暮から闇になる能舞台を照らす石井さんの
 照明の中で、装束をどうするか、と云う話があり
 石井さんが、谷崎潤一郎の「陰翳礼賛」にふれていた。
 この「陰翳礼賛」は谷崎のすぐれた日本文化論で
 主題は 日本人はなぜ、古来、薄明かりの中に美を
 求めてきたのか ということなのだが、2人の対談に
 ひかれ、あらためて頁を繰ってみた所、今まで気が
 つかなかったのか、忘れてしまったのか、どちらか
 だが、谷崎がこの文章で「能舞台」に触れている
 のを知った。「能の装束は(谷崎は衣装といっている)
 照明の暗い能舞台の上では、金色が映えて本当に
 美しく見える。また、能役者の肌の色との釣り合いが
 よくみえて、古い時代の実際の姿に見える。歌舞伎の舞台
 は照明が明るすぎて、作り物そのままだ。」というのが趣旨。
 実際はコクのある文章なので紹介は難しい。これが書かれた
 のは昭和8年頃なのだが
 その頃の能舞台の照明は実際はどうだったのだろう。
 今の「能舞台」は別に暗い照明ではない。谷崎は何というだろうか。
 三渓園の能のタイトルは「あかり 夢幻能」というのだが、
 当日 照明を手がける石井さんが「陰翳礼賛」を出した
 必然性が、読み直したおかげでよく理解できた。
 当日の舞台が楽しみになってきた。