吉田秀和 死去

月曜日  晴れ

暑し。天候不安定で、雷雨があるとの予報が出たが当地は異常なし。但し終日風強く、不快なり。

 本日の朝刊、吉田秀和氏、22日に死去の報を伝える。とうとうというのが実感。98歳。天寿を全うしたというべきだろう。「平成の3大老人」のうち、健在なのは丸谷才一氏だけになってしまった。

 新聞には追悼文と評伝が3本も出た。評伝は朝日の吉田純子記者、追悼文は丸谷才一氏と堀江敏幸氏。3本共写真入りの立派な文章だ。とくに丸谷氏の文章には、丸谷氏の文化勲章受賞を祝う会で小澤征爾吉田秀和丸谷才一の3人が肩の力を抜いて談笑している写真が載せられていて、3人の和やかな笑顔がとてもいい。丁度半年前の姿だが、まだ吉田も元気だったのだ。
 写真の撮影は吉田純子記者。

 自分も吉田記者に頼んでこんな姿を残したいものだ。  
 (ムリだ!)

音楽は時間の芸術である。だから、これを文章で表現して残すのは凡人には至難の業だ。勿論、自分にはとても出来ない。
「音楽展望」を始め、吉田の文章はずい分読んで勉強になったが、記憶に残っているのは、バーンスタインがイスラエルフィルを振って、マーラーの9番を大阪フェステイバルで演奏した時の評。前にこの「日常」にも書いたから多くはふれないが、吉田はこの日の演奏を「名演というより偉大な演奏」と書いた。文章には何故「名演」というより「偉大」なのかということが、情の限りを尽くして切々として述べれていた。
 吉田の演奏評には説得力があり、それを読むとすぐその曲を聴きたくなる。そして、独特の香りをもった文章で、いつも音楽を美しい宝石の姿にして読者に差し出した。彼はすぐれた詩人だったのだ。