久保栄 火山灰地
月曜日 晴れ
節分を過ぎると急に暖かくなってきた。このまま「春」になるのどろうか?昨夜は今年始めての雨降り、今日は気のせいか 春霞のような空気、寒い冬が去るのも寂しい感じがする。
テレビで毎日火山の噴火がもたらす火山灰のニュースをみて、今は全く忘れ去られた作家を思い出した。長編戯曲「火山灰地」を書いた久保栄である。
この作品は1937年に書かれた長編戯曲で、テーマは火山の噴火とは関係なく、農業技術者の、北海道十勝平野での苦闘をリアルに描いたもの。
高校を出たころ、久保栄の長編小説「のぼり窯」が評判になり誰かに雑誌を借りて読み出したが、堅苦しくて面白くなく中途でやめてしまった。ただ 当時 久保栄 という名前は反資本主義の正義の味方のように一部でもてはやされており、その作品を読むことが何かのシンボルだった。代表作は「火山灰地」であることは知ったのだが、当時は作品を手に入れる術がなく、読むことが出来ないまま全く忘れてしまった。久保栄を話題にする人も、いつのまにか無くなってしまった。
1958年 その久保栄はうつ病で入院中 自死していたのである。
今度の噴火と火山灰騒ぎから、忘れられた久保栄とその「火山灰地」を思い出したのだが、「火山灰地」の現物を手にしたくなった。昔 新潮文庫にあったようだが、とっくに絶版。
5年ほど前に新宿書房がこれを出版したことを知ったが アマゾン価格で何と6000円! お金を出して手に入れる気は全くない。
物好きに調べたところでは、
1949年刊 久保栄選集 第4巻 中央公論社
1952年刊 新潮文庫
1953年刊 昭和文学全集 第24巻 角川書店
1956年刊 現代日本文学全集 第50巻 筑摩書房
の4点に「火山灰地」が収録されていることがわかった。だがみんな絶版。図書館で借りるより手がない。