小説 日本芸譚

日曜日  快晴。

明日から師走。特に実感もなし。終日ウロウロして、折角の快晴なれど外にも出ず。

松本清張の「小説日本芸譚」所収の「世阿弥」を読む。(新潮文庫 1961年刊) 
1957年に芸術新潮に連載されたものが文庫にまとめられたもの。
全体では世阿弥のほか、雪州、利休、運慶、など10人の人物とその芸論が書かれているが、恥ずかしながら「世阿弥」の外は未だに読んでいない。松本清張の作品には歴史の表より裏が書かれたものが多く、人の生涯を書いても、表舞台に出ようとしても出られなかった人、或いは舞台から引き摺り降ろされた人のドラマを好んで書いた。この「世阿弥」も、世阿弥足利義満の寵愛を受けて能の作者、役者として頂点を極めながら、義満の死後、世阿弥の後を継ぐと自他共に許していた息子の元雅とともに追放され、ために、元雅は失意と共に死去し、世阿弥佐渡へ理由もなく流されてしまう。栄光が一挙に闇に閉ざされてしまったわけで、清張は失意に覆われた世阿弥の老年期をロマンあふれる筆で描いている。専門家が語ると難しくなる能楽創生期の動きを一気に読ませる作品にした清張の筆力はやはり立派なものだ。

夜は例によりN響の時間、今日はN響は休みで飯森泰次郎指揮の関西フィル。このオケは演奏会の前にオケのメンバーがホールの玄関に並んでお客さんを出迎えることをしている。おかげで、ファンが増えているそうだ。地方のオケは苦労しているようだ。飯森泰次郎の指揮で、プロは、シャブリエ作曲 歌劇「いやいやながらの王様」から、「ポーランドの舞曲」。デュメイのバイオリンでショーソンの「詩曲」。大沢寿人作曲 交響曲第2番。という個性あるプロ。呼び物は大沢の交響曲だが、この人の名前は知らなかった。