金曜日 曇り。
今日も暖かい。4月の陽気だ。TVは北半球の12月、1月の平均気温が観測史上最高だったことを伝えている。日本はどこも雪祭り全滅。これでは「春を待つ」という季節感が全く湧かない。夏はどうなるのだろう。
 平岩弓枝の長編推理小説「黒い扇」を読む。角川文庫 1986年刊。平岩弓枝の作品はかの「御宿かわせみ」シリーズも含め全く読んだことがないが、何かの機会に、彼女が自分と生年月日が同じであることを知って、古い文庫本を読み出したもの。50円也。
この作品は1960年に秋田魁新聞の夕刊に連載され、翌61年に単行本として出版されたものだから、半世紀近く前の作品だ。日本舞踊の家元の周囲に起こる4ッの殺人事件に、それを追いかける若い男女の恋愛の葛藤を絡ませて描いた長編で、文庫本で600ページのヴォリューム。相当なものだ。だがストーリーに起伏があり、要所要所に意外性があって一気に読ませる作品になっている。久しぶりに「面白い」小説に出合った。ところでこれを書いた時、彼女はまだ20代だったが、その前年にはすでに「鏨師」で直木賞を受賞している。23才の青山七恵さんが今年の前半期の芥川賞を一発で受賞して話題になったが、平岩弓枝も一発受賞だったそうだ。ただその頃は直木賞を受賞しても、今の様に華やかな話題にもならず、そのまま流行作家になることもなかったという。彼女は派手に舞い上がることなく、長谷川伸戸川幸夫に弟子入りして、ひたすら作家としての路を歩み続けた。そして日本文芸大賞、菊池寛賞、吉川英冶文学賞、などを受賞し、1997年には紫綬褒章を受章している。同年のこちらは、恥じ入るのみだ。