日本はいい国だった

火曜日  晴れ。
風強く、気温高し。23℃くらい。
今年の6月に亡くなった指揮者の岩城宏之は、自分でも「物書き」という通り、文章をよく書く人でもあった。彼が岩波新書に書き下ろした「楽譜の風景」は、楽譜の書かれ方から作曲家とその作品を考察したユニークな著作であり名著といってもいい。そのほかに、週刊誌や雑誌に発表した気楽に読める文章が沢山あって、その多くは新潮文庫に入っている。曰く「男のためのヤセる本」曰く「ハニホヘト音楽説法」曰く「岩城宏之のからむこらむPART1」「PART2」など。この中から別に意味もなく「PART2」を引っ張りだして読み出したが面白い。82〜5年頃の文章だが、その頃読んで気がつかなかった面白さがある。82〜5年といえば、あのロン、ヤス時代でついこの間のような気がするが、もう20年以上も前のことなのだ。岩城はこの頃殆ど外国にいて、文章も外国で書かれたものが多い。
 岩城がこの「PART2]の中で繰り返して発言しているのは、自分が滞在しているヨーロッパは「なっちゃあいない」ということだ。ストが多い、1流ホテルの設備とサービスが不完全、町はゴミとペットの汚物だらけ、不景気でギャラも契約通り払われない。
 それにくらべると日本はなんと豊かで平和なことか。「一億総中流」でトラブルがない、町も清潔、文化ホールも普及している、等々。(彼のいうヨーロッパはフランス、ベルギー、オランダ、イギリスなどで、いま日本で「美しい国」のイメージが定着している国々)
 岩城が日本が豊かで平和ということを実感をもって語っていることに感じ入った。 今の日本は毎日毎日不愉快なことばかり.
この20年で日本の「品格」が格段に落ちたことが、岩城の文章から読み取れるのだ。岩城も意識せずに感じるままを書いたのだろうが、今はとても書けないことだろう。調べてみたら、1983年に殺人事件で殺された人は34人だという。今はその10倍近いのではないか。20年前の岩城のように、日本はいい国だと実感をもって云いたいものだ。「美しい日本」のアベさん、どうですか?