トマス・ペインとオバマ

日曜日  晴れ。
終日、雲一つない快晴。空気は冷たく日中も寒し。

トマス・ペイン「コモンセンス」を読む。1953年刊。ボロボロのの岩波文庫。本文100ページ足らず。岩波文庫の中でも1番薄っぺらではないかな。
トマス・ペインは18世紀の半ば、まだイギリスの植民地だったアメリカに渡り、イギリス国王ジョージ3世の過酷な植民地政策にあえぐアメリカの姿を見て、このパンフレットを短い時間に書いて出版した。1776年である。本文に曰く「立て!人類を愛する諸君、暴政だけでなく、暴君に反抗する諸君、中略 疑い深い心、または、不審そうな好奇心でお互いに眺めあうことをやめ、めいめいが隣人にあたたかい友情の手をさしのべよう、すべてを忘れ去って団結しよう!」(小松春雄訳)
 当時人口300万人のアメリカ人のうち文字の読める人は皆この「コモンセンス」を読んだという。そしてこの書がアメリカ独立宣言の引き金になったといわれている。
 ところで、「アメリカよ!」と呼びかけ、アメリカ建国の苦難からの歩みを説いてアメリカの団結を説いた先日のオバマ就任演説は、この「コモンセンス」に基調が似ていないだろうか?事実 演説にはペインの言葉が引用してあるというが、それがどこなのか、自分は確認出来ていない。オバマ演説はアメリカの直面する課題と、それを克服すべきアメリカ国民の責任を説き、建国以来の歩みと未来の理想をわかり易く、そして格調高く語った。20分足らずの演説は、寒空の下、200万人を越える人々を引きつけだけでなく、TVの前に世界の人々を集めた。
 「コモンセンス」は、オバマ演説から思い出して半世紀ぶりに読んだもの。独立と自由を尊ぶアメリカ精神の源流を知ることが出来る優れた古典である。オバマ演説にラップした、まさに今読むにふさわしいものだ。訳者による巻末の解説も中途半端なものでなく、18世紀のイギリスとアメリカの歴史を背景にしたトマス・ペイン論で、戦後僅か7〜8年のころ書かれたものだけに’革命家’トマス・ペインへの思い入れが窺われる情熱的な文章である。解説だけでも一読の価値あり。なお、本書は長らく絶版だが、近く復刊されるとの情報もある。さもありなん。