ジャガランダ、そして戦時の第九

日曜日  曇り

 陽が差さず、ヒンヤリした空気です。気象情報は湿気が多く
蒸し暑いというが、幸い?当地ではそんなことはなし。
 熱帯地方のジャガランダが、神奈川歯科大の構内で開花しているというので見てきた。ジャガランダというと紫色の並木を連想するが、ここにあるのは一本だけ、やや存在感なし。それも満開はまだ10日位先とのことで、今日はこの程度、予告編というところです。




息子がこんなに音質が悪い第九があったといって持ってきたCDを聴いた。フルトベングラーの振ったベルリンフィル、ブルーノキッテル合唱団の演奏、何と1942年3月のベルリン フィルハーミニーホールでのライブ録音だ。ベルリンは翌年から連合軍の大空襲を受け、44年春には瓦礫の街と化した。フィルハーモニーホールが壊滅したのはいうまでもない。恐らく戦時中最後の第九だろう。
 音質は悪いが演奏は感動的な熱演だ。第三楽章のアダージョカンタービレはベートーベンの曲の中でも最も美しい音楽だが「尋常でない遅さ」という解説がついている。たしかに普通は14分位でまとめるものを、20分を超える演奏をしているのだからおそいといえばおそい。だがフルトベングラーがこのテンポで振ると、弦の16分音符がくっきりと浮き上がって聴こえ、単におそい演奏といえない必然性を帯びてくる。美しい歌になっているのだ。
特に第4楽章の迫力はすごい。ティンパニーのフォルテの連打と、聴きどころのコーダで、合唱団とオケが、聴いたことのないような早いテンポをを求めるフルトベングラーの棒に乱れることなくついてゆくのは、矢張りベルリンである。聴く者を興奮させながら曲を閉じるこの第九は、単なる名演を超えた演奏である。ベルリン最後の日が近い戦時のさなかに、これだけの演奏を残していたドイツの音楽界に脱帽せざるを得ない。