ゴールドベルグ変奏曲

土曜日 雨。
台風4号の影響でほぼ終日雨。明日の日曜日、この時間には当地も風雨がひどくなっている公算大だ。だが何の準備もなし。
 今日のCD、 バッハ ゴールドベルグ変奏曲。演奏 グレングールド。
                       55年録音と82年録音の2種。

 グレングールドは1932年生まれ。数々の話題を振りまいて50才で世を去った個性の強いピアニスト。バーンスタインの指揮でブラームスの第1協奏曲を演奏した時、バーンスタインは演奏前に聴衆に向かって「今日の演奏のテンポは独奏者の指定したもので、私のテンポではない」と前代未聞のコメントをしたというのは有名な話。このレコードがあるそうだが手にしたことはない。聴いてみたいものだ。
 グレングールドはデビューして10年ほどは演奏会を開いていたが、以後ステージから去りレコード吹き込みだけに専念した。だから日本ではグールドの演奏にナマで接した人は殆んどいない。
 グールドがレコードでデビューしたのがこの55年のゴールドベルグ変奏曲で、この演奏を吉田秀和氏を初めとする専門家は誰もが、初めて聴く神品のごときゴールドベルグ!と評している。何故そんな評が出たかというと、それまでは演奏至難なこの長大な曲を満足できるレベルで弾ける演奏家がいなかったということなのだ。レコードでは
ワンダランドフスカのチェンバロによるものがあり、有名なレコードだが、吉田氏は
ゴールドベルグを弾く技術がない!と酷評している。
 そのグールドが生涯の最後に録音したのがやはりゴールドベルグ変奏曲で、82年版
のもの。このレコードを 名盤の誉の高い27年前の初録音を遥かに凌駕する名演奏と評する人が多い。(諸井誠氏など)
 シロウトが聴いてわかるのは、82年版は主題のアリアのテンポが遅く、しかも繰り返しをいれているので印象がまるで違うこと。55年版は繰り返しを全く省いているが、82年版では必要な繰り返しを入れていること。30番の変奏曲のテンポが82年のそれは極端におそいこと、デジタル録音のせいもあるだろうが、音の粒粒が82年版は特にダイヤモンドのようにきらきらと輝いていること などだ。ちなみに演奏時間は55年が36分、82年が52分。どちらがいいか というと軍配を上げる自信がない。どちらもいいという外はない。
 ゴールドベルグ変奏曲はバッハ最晩年の傑作、だが日本ではリサイタルの曲に採り上げる人は先ずいない。小林道夫くらいではないか。この曲のアリアはある貴族の不眠症を癒すために作曲され、ゴールドベルグという人が演奏したのだそうだが、バッハのこの変奏曲は決して子守唄のように生易しいものではない。