「ミュンヘン物語」を読む

日曜日 曇り。
 雲があるが雨降らず。九州 熊本では1時間に90ミリという
 信じられない大雨で家屋浸水、などの被害続出、77才の男の
 人は見回りに出て水に流され行方不明だそうだ。だが、こちら
 の方は梅雨入りしてから降雨量は少ないような気がする。雲に
 覆われる日も多く、日照時間も平年より短いと思う。異常気象に
 違いない。

 今年3月に91才で亡くなった小松伸六さんの作品「ミュンヘン物語」
 読了。25〜6年前に文芸春秋社から出されたものでA5版300頁の
 立派な造本である。小松さんはドイツ文学者だが外の作品は知らない。
 だが、「ミュンヘン物語」は出されて直ぐ買って読み、通読したのは
 今回で3回目。("81,"01,"06)
  これはミュンヘンのガイドブックではない。ミュンヘンに接した
 代表的な日本人を取り上げ、彼らのミュンヘンを伝える作品から
 ミュンヘンという街の風土と歴史を浮かび上がらせたものである。
 人物は、森鴎外有島武郎与謝野晶子、斉藤茂吉、野上弥生子
 田中路子など。ほかにトーマスマン、ルードイッヒ2世、トロツキー
 レーニン、ヒットラー、など。マックスウエーバーの「職業としての
 学問」がミュンヘン大学での講演であったことも記されている。
 ドイツ北部、ベルリンを中心とするプロイセン地方と、ミュンヘン
 首府とする南ドイツ バイエルンの文化の違いの大きいことが、
 わかり易く書かれている。プロテスタントとカトリック、ワインとビール
 の文化など。
  本文の欄外に毎頁雑多なコメントがあり、これが中々面白く本文の理解
 を助けている。記述法のよいアイデアだ。         
 

 一橋大学の増田四郎さんが1950年代の半ばに初めてヨーロッパ
 を訪れた折に著した「ヨーロッパの横顔」という本(名著です)に
 3ケ月ほどミュンヘンに滞在したときの文章がある。5月31日の聖日に
 ミュンヘン市民が民族衣装を着けて集って市中は聖歌の合唱と祈りに包まれ
 ミュンヘン全体が教会のような雰囲気になると、その経験を感動的に綴っている。

  ミュンヘンはベルリンと違う個性的なローカルカラーのある都市のようだ。