*{文学}漱石
日曜日 雨。
やや寒く、梅雨の雰囲気。TVはサッカー一色になった。
特にNHK.
日曜日 恒例の朝日新聞書評欄に柄谷行人氏が「漱石の「心」という
作品は「こころ」または「こゝろ」と表記するのが正しいと考えられて
きた。が、自筆原稿にあたって調べると「心」が正しい」と書いている。
果たしてそうか?
岩波「漱石全集」の表記はなるほど「心」になっている。ところが
大正3年に同じ岩波から出た初版本は、函の「背文字」は「心」だが
本体の背文字は「こゝろ」になっている。また巻末には「こゝろ 終」
の記載がある。「心」が正しいとは言い切れないのではないか。
なお、初版本の巻頭に漱石の序文があり、それは「心」と表記されている。
漱石は、かなの表記も、漢字の使い方も大らかで厳密ではなかった。
初期の全集編纂にあたった内田百間は、整理のために手控えの
「漱石言葉使いの辞書」を作っていた。
ということで、これは柄谷氏のいうような、どちらが正しいか という
問題ではなく、漱石の個性から出てきた人間的な問題と捉えるべきだと思う。
なお、「こころ」という表記は恥ずかしながら未見デス。