里見弴 対談集を読む
2月20日 水曜日
曇り→晴れ 寒し
昨日は午後から箱根の山はとうとう雪になりました
おかげで一歩も外出できず。
時折、温泉に体をゆだね、部屋の中で籠城を決め込み、そして自宅から持ち込んだ里見弴の「対談集」を読みつつ時間をつぶす。思えば贅沢な話だ。
里見弴の対談の相手は、志賀直哉、船橋聖一、徳川夢声、江藤淳、吉野源三郎、森繁久弥、丸谷才一、永井路子など。皆、故人になってしまったけれど、大変な面々だ。(失礼!永井路子さんは生存)
この本は丁度30年前、昭和58年の2月に「かまくら春秋社」から出されたもの。戦前から雑誌に発表されたものをあらためて一巻にまとめたものだが、読後は、決して雑な「寄せ集め」の印象ではない。それは里見弴の個性によるものだ。話題は文学、歴史、美術、芝居、スポーツなど対談の相手によって話題は広がっているが、会話に品の良いユーモアがあり、上すべりのところがなく、自然の流れを作りながら会話がすすめられてゆく。この上質の味わいは、お笑い中心の今のテレビ文化にはないものだ。そして、泥臭い政治や経済の話題がないのが、読むものに爽やかな後味を残す。
ところで、今街の本屋で里見弴の作品を手に入れることは出来ないのではないか?岩波文庫の目録に10点ほどあるが、絶版らしく(独断かもしれない)探すことが出来ない。手元に岩波文庫「文章の話」があるが、恥ずかしながらまだツン読中。江藤淳との対談で、文章は声に出して読んで耳から理解出来るのが良い文章だ と言っていたが、自分も同感なので、すぐ開いて見よう。
対談集の中で一番感銘を受けたのは、昭和30年「世界」の9月号に発表された吉野源三郎との対談「原田日記が世に出るまで」である。これは身の引き締まる内容だった。「原田日記」を所持しているので、それに少し目を通した上であらためて感想を書くことにしたい。