和辻「鎖国」初版本

火曜日  曇りのち晴れ。

寒し。今年はいつもより体感温度が低いような気がする。年をとってきたせいだろうか。今日は今年はじめて整形へいってリハビリをしたが、ヨロヨロ症候群には効果はないようだ。歩行は軽くなるような気がする。半分は気休めか。これもよし。




上は、和辻哲郎「鎖国」の初版本である。昭和25年4月15日刊。定価940円。大学に入った年に刊行されたもので、箱入り800頁の大冊でズシリと重い。当時出版された人文系の書物の中では、ずばぬけて立派な体裁の本だったが、とても買える値段ではなかった。
教室の中でひとり女子学生が自慢そうに抱えていたが、ただ羨望の眼で眺めるのみ。戦後間もないこの時期に、これだけの書物を出した筑摩書房の志は高かったと言わねばならぬだろう。

 この「鎖国」は筑摩叢書で普及版が出され、更に昭和57年には岩波文庫に上下2冊本として収められた。この価格が上下で950円である。岩波は初版本の「定価」を意識していたのかもしれない。自分は「鎖国」を岩波文庫で読んだのだが、60年以上前に出された初版本で読みたいという思いはどこかに残っていた。

 それを2〜3年前に見つけたのである。僅か700円!手にとってみると、紙質は最近の書物とちがってザラザラだし、製本も取り立てていうほどのものではない。美人もこの程度だったのか という感もしたが、何しろ戦後僅か5年目に出たものだ。そして自分にとって高嶺の花だったものだ。題字が右の横書きなのも時代の空気を味わう感がする。文庫本と違い重量感がなんともいえない。自分はあらためて「日本の悲劇」と副題をつけられた本書を初版本で読み通した。スマホ時代に合わぬ、内容体裁共に重厚長大型の書物だが、これがいいのだ。