観月能の放映日のこと

土曜日   晴れ


毎年10月中旬、満月の日を選んで、厳島神社の能舞台で喜多流の能が演じられる。シテ方は人間国宝、友枝昭世師。演じられる美しい能の進行と共に、潮がひたひたと満ちてきて舞台を水中に浮かばせ、折からの明るい月が舞台の演者を照らし出す様は、まさに中世の幽玄の世界そのものだ。
 現地には行かなかったが、関係者から、10月10日の当日は潮の具合も、月の趣も良く、いい舞台だったという報告があった。そしてNHKも11月26日の午後放映するということで、このチラシが送られて来た。
 能「融」は、前半は汐汲の翁、後半が月の光の中での優美な舞、という
宮島の秋の観月能にピッタリの演目といえる。

 ところがである。NHKはこの放映日を理由を明らかにせぬまま変更した。変更日は1月2日の23時から25時の2時間。もう深夜である。
 当初予定の11月26日の15時〜17時の放送番組は障害馬術大会の録画が1時間、料理番組が1時間、で、観月能の番組を変更すべき必然性は感じられない。もし、能番組には、正月が相応しいというなら、何故一般市民が観易い時間に放映しないのか。聞くところによるとNHKは正月のゴールデンタイムに変更しました 上層部の意向です と説明したそうだ。

 演者、能楽ファンに大変失礼なことだ。視聴者への礼を忘れているのではないか?