海部元首相の回顧録

木曜日  曇り→夕方から晴れ

 午前中は殊勝にも庭の草取りと枝刈り。草と木の枝だけは元気で伸びている。滅多に手をかけないので茫々たる有様、毎日欠かさず少しでも手を入れるといいのだがそれが出来ない。この「日常」の如し。
 1年ほど前に「海部俊樹回顧録」なる本が出た。(新潮新書)タイトルは「政治とカネ」。あまり興味はなかったが、50円で叩き売り扱いになっていたのを手に入れ2時間程で読んだ。大体一国の首相の回顧録というのは分厚な堂々たる作品が多く、それらは、とても2時間やそこらで読めるものではない。チャーチル回顧録、ゴルバチョフ回顧録、サッチャー回顧録、首相ではないがキッシンジャー回顧録など。皆 歴史の証言として価値あるものばかりだ。
 わが海部首相の回顧録は三木武夫金丸信竹下登中曾根康弘、そして小沢一郎などが登場人物になっているから、われわれには分り易いが、「歴史の証言」として国際的に評価されるような重味のある作品ではない。
海部さんは権謀術策とか金権とかいう世界から少し距離があったので、あまり抵抗なく読めたというところか。
 新進党をめぐって、海部が党首、小沢が幹事長になったとき
のことをこのように書いている。「正直言って、この時はもう彼と、腹の底から信頼し合う関係を築こうとは思わなかった。「期待値を高めておいて大きく翻る人」という過去の事実が、すでに私の頭にインプットされてしまっていたのだ。
 今民主党の党首候補は、皆、カネと力欲しさに小沢詣でをしている。これでは日本の政治家からは格調の高い回顧録は生まれそうもない。
 海部回顧録の最後の方で「小泉総理が自分と異なる意見を「反対勢力」と呼んで頭ごなしに排除し、ひらばの議論を封じてしまったことを忘れてはいけない。しかも氏は、アメリカかぶれの学者を重用し格差社会を生んでしまった。そして、自分が作った社会に悪い結果が出始めた途端、表舞台から逃げた。私は、小泉氏の政界引退を、或る意味、無責任、掃除もしないで見物席に去ってしまった行動と受け止めている。」

 よく書いてくれた。ここが、海部回顧録の白眉である。