書肆「青蛙房」

火曜日 晴れ、

寒し、空気が冷たい。冬だからこんなものだろう。気象情報は寒波襲来と大げさに騒いでいるが、コートも手袋も必要ないのだから別に騒ぐ必要はないだろう。当たり前の季節の到来ではないか。

師走ももう半ば。銀座、赤坂はどうなのかわからないが、ここらは街の雰囲気に歳末もクリスマスもない。昔は暮れになると、夜はタクシーをつかまえるのが大変だった。ああ年末だな と実感したものだ。今は夜の街に忘年会の雰囲気も窺えない。景気のせいか、社会の風潮がこうなったのか、いずれにしてもあまり明るい話題ではない。退役した高齢者には縁のないことか。

 今読みつつある「岡本綺堂日記」の発行書肆は「青蛙房」である。全く気がつかなかったが、この書肆の発行人は「岡本経一」と云う人で、調べてみたら、この人は「綺堂」の嗣子だった。今100歳くらいらしいが、1980年に「半七捕物帳」を出版するために「青蛙房」を作ったのだという。この書肆は歴史探訪とか、劇作の裏話、芝居の人物論、地誌など特色ある出版を続けているが、まだ健在なのだろうか?元首相の宇野宋佑がこの書肆から「中仙道守山宿」というA5版の立派な本を出している。


自分の生まれ育った中仙道の宿場町の姿を、歴史、風俗、の話題を中心に伸び伸びと書き記したものである。この人にはほかに「庄屋平兵衛獄門記」という、滋賀県の天保農民一揆の史実を追求した一冊が同じ青蛙房から出ている。彼は不名誉なゴタゴタで政治の世界から消えたが、著述家に専念した方が良かったのかも知れない。