火曜日 晴れ。
 暑い!ピークかな?

最相葉月の7年がかりの労作「星新一」新潮社刊 をやっと読了。別に難しい本ではないし、テーマも面白いのだが、このような浩瀚な著作を何時間も読み通す根気がなくなってきたのを痛感。暑さのせいといったら言い訳になる。
著者 最相葉月さんは1968年生まれのフリーライター、1998年に新潮社から出した「絶対音感」で有名になった。その後、自然科学分野とスポーツ関連の著書、評論を多く出しているがこの「星新一」は彼女の代表作となるだろう。

  星新一はショートショート或いはSF小説の書き手として大変な人気のあった人だが、自分はその方面に関心がなく、殆んど作品を読んでいない。
 関心があったのは、星新一の祖父 小金井良精の妻 小金井喜美子は森鴎外の妹で、その著書「森鴎外の系族」と「鴎外の思ひ出」の2点が岩波文庫に入っていること。また父 星一が有名な星製薬の創始者で波乱万丈の生涯を送ったひとであったことの二つ、星新一は父の死後 大借金を抱えたこの会社の社長となり、大変な苦労の挙句、会社を倒産させてしまったのだが、星新一の作品の中にこの星製薬の苦闘を書いた「人民は弱し 官吏は強し」「明治 父 アメリカ」 2点共 新潮文庫 と祖父を書いた「祖父小金井良精の記」 河出書房新社刊 があり、その3点だけは大分前に読んだ。だが星の本職ショートショートは全く読んでいない。なお星新一は東大農芸化学の出身。

 

 最相さんの本は、前半が父 星一と星製薬の苦闘の物語、後半が星新一苦労をして会社を整理し、挙句ショートショート1001篇を達成するという人間の限界に挑戦した記録である。多くの事項、文献、関係者のインタビューなど手間ひまかけた文字通りの労作で、特にSF文壇の人物相関やその盛衰が整理されているのが貴重な業績だと思う。願わくば人名索引を作って欲しかった。まあ暑い夏にはやや重過ぎるかも知れない。なお本書は本年度講談社ノンフィクション賞を受賞している。