三島由紀夫の大衆小説を読む。

火曜日 快晴
朝から雲ひとつなくカンカン照り。予報は大はずれ、絵に描いたような夏空だ。近畿は梅雨明け宣言が出たが、関東はまだ。予報官のメンツかな。

 三島由紀夫に「複雑な彼」という作品がある。昭和41年に週刊誌「女性セブン」に連載されたもの。週刊誌の連載小説だから堅苦しいものではなく、面白く読めるのだが、さすが三島の作品だけあってよく磨かれた透明な文章と、三島好みの今流にいうならハイソ、セレブな世界が描かれている。主人公の若い女性が日航のファーストクラスの乗客となってアメリカへ出かけるのだが、機中の機内サービスにつとめる男性の客室乗務員に心を惹かれるところから始まり、それからの二人の感情の交錯を描いたもの。最後に、アパートで彼が初めて上半身裸になると、その背中に一面の彫り物があったというドンデン返しになっている。この彼のモデルは「懲りない面々」の安部譲二であり、安部が「小説に書かれた彼は彫り物を除いてはまさに私だ」と語った、と解説にある。こんな作品が三島にあったことことを自分は知らなかったが、それは、単行本は勿論、これを収めた集英社文庫も絶版になって目にすることが出来なかったことにもよる。新潮社の決定版三島全集の第12巻が僅か100円で転がっていたのを買ってきたら偶然「複雑な彼」が入っていたというのが読むことになったきっかけで、お粗末な話です。

 三島由紀夫の母校


 

 三島全集第12巻 100円!です。