上坂冬子さん

日曜日  晴れ。
 長めの旅行が続いてPCに付き合えず、おかげでブログの更新も久しぶり。
旅先の宿で上坂冬子著「職場の群像」を読む。この「職場の群像」は、自分が社会人になって2〜3年後に中央公論社から新書版で発行されたもので、読むと共感を覚えるところ多く、その頃会社の連中にしきりに勧めたことだけを覚えている。この新書版はどこかへいってしまったが、25〜6年前中公文庫に再録されたものが古本屋の片隅にころがっていたのを見つけて旅先に持参し、50年ぶりに目を通した。上坂冬子といえば今や女流評論家の大御所で、上坂女史というにふさわしい貫禄がある。この「職場の群像」を書いたのは、彼女がトヨタ自動車に入社して人事部に配属された頃だから、まだ20才そこそこだろう。会社と労働組合の駆け引きの中で揺れ動く身の周りの人間像を、若々しい筆で綴ったもので、その書きぶりがその頃(自分も20代でした)の自分に何かを感じさせるものがあったのだろう。流石に今は読んでも余り感ずるところはなかったが、ただその頃の職場(古い言葉かな)は、ギスギスしたところの無い温かい雰囲気だったことがわかる。能率は悪いだろうが、何事も
相談づくで進められていた。今の職場(現場というのだろうが)はPCが相手で非人間的で冷ややかな雰囲気ではないかと思う。昔は良かったとはいいたくないが、今現役で働いている若い人はこの本を読むとどんな感想を持つのか興味のあるところだ。

 夜のN響の時間、樫本大進のソロでベルクのバイオリン協奏曲を聴く。樫本はあまりTVには出ないが、音が澄み切ってとても良いバイオリニストだ。この曲は12音技法で書かれた難曲だが、そんなことは感じさせず、伸び伸びとした流れできれいに聴かせてくれた。時々TVに出てほしいものだ。