土曜日  曇り。 15時ごろから雷雨。
今日は関東地方落雷による被害あり。山手線、京浜東北線不通。お盆休みも混乱気味。こちらはお盆も関係なし。先月 四国の松山に行って街中「坊っちゃん」だらけでびっくりしたが、思い立っ「坊っちゃん」を取り出して読み出した(全集 第2巻)。もう何度目かと思うが実に面白い。巻擱くあたわず、といっても過言ではない。今年は「坊っちゃん」発表100年ということで松山はお祭り気分なのだが、もう一つの代表作「草枕」が雑誌、新小説に発表されたのも100年前である。ところが「草枕」には発表100年の騒ぎはないようだ。松山と東京の違いだろうか。なお、小説「二百十日」も、同じ年の10月に中央公論に発表された。そして「坊っちゃん」「二百十日」「草枕」の三篇を合わせて小説集「鶉籠」としてこの年の12月、春陽堂から出版された。だから今年は「鶉籠」の100年目になるのだが、これでは松山市のアピールにはならないし、大体漱石に「鶉籠」なんていう本のあったことを知っている人も少ないだろう。参考のために「鶉籠」の写真を出しておく。




ところで漱石の小説の中ではこの「坊っちゃん」は飛びぬけて面白い。無鉄砲な主人公「おれ」が、松山の中学に数学教師として赴任してから、学校と喧嘩して辞めるまでの1年間に巻き起こす騒動が主題というのは誰でも知っていることだが、ここに書かれた教師、生徒の人間性と、赴任地の土地柄に対する主人公「おれ」の不満がわかりやすく書かれ、そして誰もが「おれ」の人柄に惹きつけられる、という爽やかな読後感が残るという意味で、漱石の作品では異質である。難しい理屈がないのがいい。「坊っちゃん」と並んで「鶉籠」に収められている「草枕」の有名な文章「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。」というのは、実は坊っちゃんの心境なのだというのが理解出来る。