金曜日 曇り.





 在 東京。25日夜、初めて「蝋燭能」を観る。
 国立能楽堂企画公演で「平家物語の女たち」というテーマ。
 演目
  1、平曲 「横笛」
  2、狂言 「越後婿」
  3、喜多流能 「巴」   の3本。

  見所の明かりが消され、舞台周りの白州に設けられた燭台に
  火が灯されると暗闇の中に能舞台が浮き上がって、見慣れた
  能楽堂とは違う世界のよう。見所の人の顔は見えず、手許の
  プログラムの字も読めない。バイロイト祝祭劇場が、観客が
  舞台に集中出来るようにワーグナーの意向で、客席が真っ暗に
  してあるということを連想した。
   1、平曲とは琵琶による平家物語の一節の語り。盲人に累代
     口承された正統な平曲は、大半が廃滅しているので今日
    の演奏は貴重なものだそうだ。初めて耳にするもの。
     だが「語り」の節が平板なので、ほとんど眠っていました。
    申し訳ないが気持ち良かったです。

   2、狂言「越後婿」 これも始めて観る演目。
      婿入りの日の飲や歌えの挙句、囃子入りで婿が「越後獅子」
      を舞うというお目出度い賑やかな狂言。
      ゆらぐ灯りに照らされた派手な獅子の舞が印象的でした。

   3、能「巴」  修羅能の中で女性(巴御前です)を主役にした
       唯一のもの。
       シテの赤の唐織が蝋燭の灯りに照らされると、装束の柄が
       クッキリと浮き上がって効果抜群!若女の面も時に口を
       動かしているように見え、能舞台の照明の効果を再認識
       させられた。後シテは長刀をかかえた勇壮な修羅舞だが
       勇壮な中に女をどう表現するかがシテの見せ処、ここは
       よかったのかどうか、こちらの鑑賞眼ではまだ評価出来
       る実力がない。
        最後に橋掛かりでシテが赤の唐織と烏帽子を脱ぎ、義仲
       の形見の白い小袖(水衣)に着替えて舞台を去るところは
       赤から白への転換が火のゆらぎに映えて絶品でした。
        まさに「幽玄」の世界を見る思い。この「能」の難はアイの
       「語り」が長いこと。ここはやや退屈。
       ワキの殿田謙吉は貫禄。声の通りがよく柄も大きくて立派。

      シテ 友枝昭世。ワキ 殿田謙吉。アイ 野村萬斎。